歴史の息づく地域を温かく愛情あふれる筆致で語る、珠玉のエッセイ
膨大な当シリーズの端緒を開くにあたり、↓のレビュアーさんが仰っている通り、
自身の身近な地域からあたってみようか、と思い立ち、本作品を手にしました。
現在居住している地域を20数年前に司馬氏が須田画伯と訪れ、様々な邂逅と
ともに、幅広い識見と歴史認識に基づいた分析を、その旅の中で脳裏に浮かぶ
思索の記録として残された、珠玉の名品ではないでしょうか。
今作品では、近江の古戦場から得られた無常感、その中で近江の人々の逞しさ、
また、琵琶湖に関わる環境問題を取り上げ、現在の我々にも通ずる、未来の自然に
対する深刻なる警鐘。その一方で、悠久の歴史を千年一日のごとく守り通す、
奈良の逞しさ、普遍性。
そういった大切な物事を、温かい目で見通された人物描写、自然素描によって
魅力あふれる思索集としても鑑賞し得る、珠玉の名品ではないでしょうか。
当シリーズの様々な作品により、日本の歴史、そして今をもっともっと知りたいと
思えるようになりました。
親近感のわく面白い一冊
「街道をゆく」の読まれ方として、自分に関係の深い地域から読んでいくパタ ーンが多いと思いますが、私も近畿(京都)出身であることから、この1冊を読み始めました。そのためか、自分の知っている箇所の記述もあり、非常に親近感が感じられた1冊でした。また、「街道をゆく」全体を通じた特徴として、登場人物にはいわゆる「大人」が多いのですが、とりわけこの1冊には、自分もこういう人になりたいと思える人が登場し、面白く読めました。
朝日新聞社
街道をゆく〈26〉嵯峨散歩、仙台・石巻 (朝日文庫) 街道をゆく〈21〉神戸・横浜散歩ほか (朝日文庫) 街道をゆく (27) (朝日文芸文庫 (し1-28)) 街道をゆく (18) (朝日文芸文庫 (し1-19)) 街道をゆく (16) (朝日文芸文庫 (し1-17))
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